1日自動車保険は、他人のクルマを借りて運転する際に加入する自動車保険です。
しかし、どんな車でも加入できるわけではなく、法人名義の車などは補償の対象外です。
会社が購入した社用車を1日だけ借りて運転したい。他人の車を借りようと思ったが法人名義になっていた。
こんな場合、1日自動車保険では補償されないとなると、どうすればよいのでしょうか。
今回は、1日自動車保険が使えなかった場合の代替案を解説します。
法人名義の車を運転する機会のある方は、ぜひチェックしてみてください。
当記事の監修者:竹国 弘城
- ラポール・コンサルティング・オフィス代表
- 1級FP技能士/CFP®
証券会社、生損保総合代理店での勤務を経てファイナンシャルプランナー(FP)として独立。相談者の利益を第一に考え、自分のお金の問題に自分自身で対処できるようになるためのコンサルティング、金融機関・各種メディアでの執筆・監修などを行う。
1日自動車保険は法人名義の車両では利用できない
保険会社が販売している様々な保険商品は、個人だけでなく法人名義でも加入できるケースが多いです。
そのため、最安800円から申し込みが可能な1日自動車保険を法人名義の車に利用したいと思っている人もいると思います。
しかし、通常の自動車保険の場合は法人名義で契約が可能なケースがほとんどですが、残念ながら1日自動車保険は法人名義の車は対象外となっています。
セブンイレブンから申し込み可能な三井住友海上の1day保険や、契約者数トップを誇る東京海上日動火災のちょいのり保険など、現在販売されている1日自動車保険は、あくまで個人向けの商品となっています。
そのため、法人名義で登録されている車を使って起こした事故による治療、賠償、修理などに関する費用は、法人が加入している自賠責保険や任意保険を利用することになります。
所有者は実態で判断されます。そのため名義が法人でなくても、実態として法人が所有している車では1日自動車保険を契約できません。
レンタカー・カーシェアリングサービスの車も対象外
法人名義で所有されている車として、レンタカーやカーシェアリングサービスの車があります。
レンタカーやカーシェアリングサービスの車も1日自動車保険の対象外になります。
これは1日自動車保険を取り扱うすべての保険会社に共通することですが、レンタカーやカーシェアリングサービスの車は1日自動車保険に契約できないことが約款で定められています。
そもそも、レンタカーやカーシェアリングサービスで借りることができる車には、レンタル業者側が専用の保険を用意しています。
レンタル契約と同じタイミングで用意された保険に契約する、もしくは利用料金のなかにすでに保険料が含まれていることが一般的です。そのため、自分で保険加入の準備をする必要はありません。
最近は個人間で車の貸し借りを行う「個人間カーシェアリング」サービスの利用も増えています。個人間カーシェアリングについては、借りる車の所有者は個人であり、1日自動車保険を契約できます。
1日自動車保険以外の選択肢はある?
法人名義の車は、1日自動車保険の対象外です。
たとえば、会社が所有している社用車・営業車を借りて運転する場合などは、1日自動車保険には契約できません。
では、もし法人名義の車を借りて運転する機会がある場合にはどうすればいいのでしょうか?
この場合、次の2つが対策法として考えられます。
対策1:ドライバー保険を検討する
1日自動車保険と似たような商品として、ドライバー保険という商品があります。
ドライバー保険は契約期間が1年と長く、対人・対物への手厚い補償を得ることができます。また、等級制度があるため、一定期間継続して無事故でいれば保険料が割引されます。
ただし、ドライバー保険では法人名義の車も契約の対象となりますが、親や友人の車を借りる場合よりも補償対象や条件が厳しく制限されています。
会社の業務のために使用中に生じた損害については補償されないことになっています。
また、業務以外で法人名義の車を借りる場合でも、「記名被保険者が役員となっている法人所有の自動車」はドライバー保険の補償対象外。
しかし、記名被保険者が役員ではなく一般の従業員などであれば、ドライバー保険に加入できる可能性は非常に高いです。
申し込む前に一度保険代理店または保険会社のコールセンターに相談してみると良いでしょう。
ドライバー保険には車両補償がない点に注意
ドライバー保険に加入する際には、1日自動車保険のように車両補償を付帯できない点に注意が必要です。
車両補償とは、借りた車で事故を起こした際、運転していた車が破損した場合に修理費を補償するものです。万が一車の損害が大きかった場合、修理に必要な金銭的負担を抑えることができますが、ドライバー保険の場合は付帯することができません。
また、ドライバー保険は契約期間も1日単位ではなく1年単位となっているので、保険料がネックになることもあります。
法人名義の車を借りて運転する機会が多い場合は1年契約でも問題ないですが、数日借りて運転するためだけにドライバー保険を契約するのは費用対効果が良くありません。
対策2:本人の自動車保険で他車運転特約が有効か確認
もし自分が自動車保険に加入している場合、他車運転特約が付いている可能性があります。
他車運転特約とは、自分が借りた車を運転している際に事故を起こしてしまった場合、運転者本人が加入している保険を使用して補償を受けることができる特約です。
最近は他車運転特約を基本補償にしているプランも多いので、自分が加入している自動車保険に自動的に付帯されていることも珍しくありません。
自分の自動車保険に車両保険を付けている場合は、借りた車の車両復旧費用として保険金が支給されることもあるので、1日自動車保険の代用として利用できます。
ただし、法人名義の車を業務に使用する場合は、他車運転特約の補償対象外です。また、プライベートでの利用も、会社の承諾を得ずに借りて使用した場合や、記名被保険者がその会社の役員の場合は補償されません。
補償対象となるかは、事前に約款やコールセンターへ問い合わせて確認しておきましょう。
また、借りた車で事故を起こし自分の自動車保険を使った場合には、自分の自動車保険は翌年度から等級は下がり、保険料が上がってしまう点にも注意が必要です。
以上をまとめると、やはり法人名義の車を借りて運転する場合は、補償の制約が多いことが分かります。
また、法人名義の車には会社がきちんと自動車保険に加入して保険をかけることが基本です。1日自動車保険を活用して、社員が使うときだけ保険に加入するというのはできないので、注意しましょう。
まとめ:法人名義の車は自動車保険もしくはドライバー保険を検討
今回は、法人名義の車に対して1日自動車保険は利用できるかという点を解説しました。
法人名義の車では、1日自動車保険は契約できません。
また、個人が借りる法人名義の車の中でも、レンタカーやカーシェアリングサービスの車は1日自動車保険の契約対象外です。
法人名義の車には、1日自動車保険などで使う時々に応じて保険をかけるのではなく、会社がきちんと法人向けの自動車保険に加入しましょう。
もし社員が私用で法人名義の車を借りる際には、自分が加入している自動車保険に「他車運転特約」を付帯させ、事故の際に自分の自動車保険を使えるようにしておくようにしましょう。
万が一の際にしっかりした補償を得るためにも、運転前に保険契約の有無や補償内容を確認しておいてください。