自分の車を購入した際には、「自賠責保険(自動車賠償責任保険)」に必ず加入しなければいけません。
しかし、自賠責保険は事故の相手方の補償(対人賠償)しかなく、壊してしまった物(対物賠償)や自身のケガ、自分の車に対する補償を付加させるために任意で「自動車保険」に加入するケースが多いです。
中には自動車を持っているもののあまり運転する機会がないため、自動車保険ではなく、運転する日だけ1日自動車保険に契約して補償を付け加えたいと思っている方もいるでしょう。
結論からいうと、自分の車は1日自動車保険に加入することができません。1日自動車保険は、あくまで他人の車を借りて運転する際の保険です。
この記事では、自分の車を運転する際に1日自動車保険が使えないこと、また、自分の車を運転する際に考えるべき保険について解説します。
自分の車に対して任意の自動車保険をかけようか悩んでいる方は、ぜひ参考にしてみて下さい。

当記事の監修者:竹国 弘城
- ラポール・コンサルティング・オフィス代表
- 1級FP技能士/CFP®
証券会社、生損保総合代理店での勤務を経てファイナンシャルプランナー(FP)として独立。相談者の利益を第一に考え、自分のお金の問題に自分自身で対処できるようになるためのコンサルティング、金融機関・各種メディアでの執筆・監修などを行う。
1日自動車保険は「他人の車の運転」が補償対象

1日自動車保険(1日保険)は、1日単位で加入することができる自動車保険を指します。
最近ではネットやコンビニから当日加入できる1日自動車保険も増えており、友人の車で旅行に行ったり、実家に帰ったときに親の車をちょっと運転する等の際に利用する方も多いでしょう。
そんな1日自動車保険ですが、「自分の車も補償の対象になるのか?」という声を聞くことが多くあります。1日自動車保険は保険料も安いため、自分の車を買ったは良いがあまり運転する機会がないという人などが、保険代を浮かせる手段として検討しているのでしょう。
しかし、先に結論を言うと、自分の車は1日自動車保険の補償の対象にはなりません。
1日自動車保険は、自分が他人の車を運転している際に事故にあった場合に備えるもの。そのため、自分の車に保険をかけるには、年単位で加入する一般的な自動車保険を選ばなくてはいけません。
注意!配偶者が所有する車も1日自動車保険の契約対象外
また、注意点として、1日自動車保険は配偶者名義の車を借りて運転する場合も契約対象外となります。
たとえば、妻が夫名義の車を借りて運転する際には1日自動車保険は適用されません。
この場合は、夫が自分の車に自動車保険をかける際の運転者限定の範囲に妻(配偶者)を入れるようにしましょう。
運転者限定とは、一般の自動車保険に加入する際、補償の対象となる運転者を限定するものです。補償の対象となる対象が少なければ少ないほど保険料は安くなりますが、配偶者や同居の家族などは対象に入れておくことをおすすめします。
ドライバー保険も自分の車は加入できない
1日自動車保険(1日保険)とよく似た自動車向けの保険として、「ドライバー保険」というものがあります。
ドライバー保険も、他人の車を運転するケースが補償の対象。よって、こちらもやはり自分の車に適用することができません。
ドライバー保険は、基本的に契約期間が1年。1日自動車保険と比べると、保険期間が長いです。そのため、「自分の車は持っていないけれど、誰かに車を借りてドライブに行く機会が多い」」といった人に向いている保険です。
1日自動車保険はどんな車なら加入できる?

ここまで解説したとおり、自分の車や配偶者の車は1日自動車保険には加入することができません。
では、どんな車なら1日自動車保険に加入できるのでしょうか。
一般的に、1日自動車保険に加入できる車は下記の通りとされています。
他人や親族が所有する自家用の普通車・小型車・軽四輪車(配偶者所有は含まない)
しかし、他人が所有しているからといってどんな場合でも1日自動車保険に加入できるわけではありません。
下記の条件に当てはまる車は、たとえ自分の車でなくとも1日自動車保険の対象外となります。
- 記名被保険者・指定被保険者が役員となっている法人が所有する自動車
- レンタカー・カーシェアリングの車
- 車検切れ、もしくは登録が抹消されている自動車
- 一部の高級車(フェラーリ、ベントレー、ロールスロイスなど)
以上のことをふまえると、1日自動車保険に加入することができるのは「他人が自分で使うものとして所有している一般的な普通車を借りる場合」と言えるでしょう。
自分の車にかける場合は普通の「自動車保険」へ
では、自分の車に保険をかけたい場合にはどうすれば良いのでしょうか。
自分の車を補償の対象とするには、1日自動車保険ではなく普通の自動車保険に加入するのがベストです。
もともと、自分の車を購入したときには強制的に「自賠責保険(自動車賠償責任保険)」に加入することになります。しかし、自賠責保険で補償されるのは、相手が死亡もしくはケガをした場合のみ。補償額も限定されています。
他人の物を壊した損害や相手の車の修理費用、自分自身のケガ、自分の車の修理費用などは補償されません。
このような自賠責保険だけでカバーできない補償内容を補うのが、自分の車に対して任意で加入する自動車保険になります。
自動車保険に契約する際に検討すべきおすすめの特約
自動車保険は、主に下記の3つの補償が付加されています。
人への補償 | 対人事故の相手(対人賠償保険)や、自分、同乗者に対する補償(人身傷害保険・搭乗者傷害保険)。 |
---|---|
物、車への補償 | 事故によって損害を与えた相手の車や物に対する補償(対物賠償保険)、契約した自分の車に対する補償(車両保険)。 |
その他の補償 | ロードサービス(レッカー代・臨時宿泊費等)や弁護士費用など、様々な費用を補償。 |
ここでは基本補償となる人・物・車への補償に加え、付加を検討したいおすすめの特約を紹介します。
弁護士費用特約
弁護士費用特約とは、自動車保険の契約者やその家族、契約している車両に乗車している人が自動車事故に巻き込まれた際、相手に損害賠償請求や示談交渉を行う場合に負担する弁護士費用を補償してくれるものです。
自身に過失がある事故であれば、加入している保険会社が示談交渉を行えます。
しかし、もらい事故で自身に全く過失がない場合、保険会社は法律上相手方と示談交渉ができません。そうなると示談交渉や訴訟は自分で行わなければならず、弁護士に依頼する場合の費用も負担しなくてはなりません。
弁護士費用特約があればこの費用も保険でカバーでき、お金の心配をせずに弁護士に相談できるのです。
他車運転特約(他車運転危険補償特約)
他車運転特約とは、自分が友人から借りた車やレンタカーなどの他人の車で事故を起こし賠償責任が発生した場合に、自分が契約している自動車保険から補償を受けることができるものです。
友人の車で事故を起こしたとき、もし友人が加入している自動車保険を使って車の修理代や損害賠償金などの保険金を受け取った場合には、友人の自動車保険の等級がさがってしまいます。そうすると、今後友人が支払う保険料が高額になってしまい、大きな迷惑がかかることに。
このようなことを避けるために1日自動車保険に加入をする方が多いのですが、1日自動車保険に入らなくても、自分の自動車保険に他車運転特約を付加させておけば問題ありません。
ただし、ここでいう「他人の車」には、自分の配偶者や同居親族が所有または常時使用している車は含まれないため、注意しましょう。
多くの自動車保険では、他社運転特約が基本補償となっています。
運転者限定特約
運転者限定特約とは、自分の車に自動車保険をかける際、保険の補償対象を本人や配偶者のみに限定することで、保険料を抑えることができるもの。
保険料をできるだけ抑えたいという人におすすめです。また、補償対象の範囲は契約中に変更が可能なケースがほとんどなので、適宜条件を見直して運転者の設定を変更すると良いでしょう。
1日自動車保険に加入実績がある人は割引があることも

今回説明してきたように、自分の車を運転する際には1日自動車保険に加入することはできません。自分の車を買ったときには、まず自賠責保険に必ず加入、それから任意で自動車保険に加入という流れになります。
1日自動車保険でなるべく保険料を抑えたかったという人には残念かもしれませんが、自動車保険を検討しましょう。
ここで知っておきたいポイントとして、過去に1日自動車保険の加入実績がある人は、自分の車を購入して自動車保険に加入する際、所定の条件のもと自動車保険の保険料が割引になるサービスがあります。
自分の車の自動車保険が割引になる条件
1日自動車保険の利用実績に応じて、自分の車にかける自動車保険の保険料が割引になる場合、下記の条件を全て満たす必要があります。
- 自分の車(自家用8車種)に対してはじめて自動車保険を契約する場合
- 自動車保険契約時の等級が6等級(S)または7等級(S)であること(前契約のないノンフリート契約)
- 自動車保険の記名被保険者と、1日自動車保険の記名被保険者が同じであること
- 1日自動車保険の利用実績として、自動車保険の契約始期日の前日から過去3年以内に満期日を迎えている契約回数が5回以上あること
- 1日自動車保険の利用時に保険金支払い事故が発生していないこと
1日自動車保険の利用時に事故を起こしておらず、なおかつ自分の車にはじめて自動車保険をかけるという点がポイントです。
※等級とは:自動車保険の契約者の事故歴に応じて、保険料の割増・割引を行う制度。自動車保険やドライバー保険にある制度ですが、1日自動車保険にはありません。
自分の車で初めて自動車保険に加入する場合、等級は6等級から始まります。1~20等級まであり、事故を起こしてしまうと等級がさがっていく(1に近づいていく)仕組みです。等級が大きい(20に近い)ほど割引率が大きく、1に近づくと保険料が割増になります。
自動車保険の保険料が割引になる1日自動車保険
1日自動車保険の利用実績に応じた自動車保険の割引がある保険会社は、下記の3社です。
- 東京海上日動の「ちょいのり保険」
- 三井住友海上の「1DAY保険」
- あいおいニッセイ同和損保の「ワンデーサポーター」
東京海上日動のちょいのり保険

東京海上日動のちょいのり保険は、加入方法としてスマホだけでなくコンビニ(ローソン・ミニストップ)も選ぶことができる人気の1日自動車保険です。
最も補償が手厚いプランでは「弁護士費用特約」が付帯されており、もらい事故に備えられると多くのユーザーから支持されています。
ちょいのり保険では、ちょいのり保険を利用しなおかつ無事故だった場合、その利用日数に応じて自動車保険契約時に下記の割引が適用されます。
利用回数 (1回=1日利用) |
無事故割引率 | |
---|---|---|
6等級(S) | 7等級(S) | |
5~9回 | 8% | 2% |
10~19回 | 15% | 4% |
20回以上 | 20% | 5% |
三井住友海上の1DAY保険

三井住友海上の1DAY保険は、スマホに加えてセブンイレブンでも加入手続きができる1日自動車保険です。
充実したロードサービスが魅力で、運転に不安があるペーパードライバーの方などから人気を集めています。
三井住友海上では、自分の車に自動車保険をかける際、1DAY保険の利用実績に応じて下記の割引が適用されます。
利用回数 (1回=1日利用) |
無事故割引率 | |
---|---|---|
6等級(S) | 7等級(S) | |
5~9回 | 8% | 2% |
10~19回 | 15% | 4% |
20回以上 | 20% | 5% |
あいおいニッセイ同和損保のワンデーサポーター

あいおいニッセイ同和損保のワンデーサポーターも、充実したロードサービスに定評がある1日自動車保険です。
あいおいニッセイ同和損保では、自分の車に自動車保険をかける際、ワンデーサポーターの利用実績に応じて下記の割引が適用されます。
利用回数 (1回=1日利用) |
無事故割引率 | |
---|---|---|
6等級(S) | 7等級(S) | |
5~9回 | 8% | 2% |
10~19回 | 15% | 4% |
20回以上 | 20% | 5% |
まとめ:自分の車は自賠責保険と任意保険の自動車保険で補償
今回は、自分の車は1日自動車保険に契約することができるのかという点を解説してきました。
自己所有の車、もしくは配偶者名義の車は、1日自動車保険に加入することはできません。自分の車は、必ず加入する「自賠責保険」と任意で加入する「自動車保険」でリスクに備えましょう。
少しでも自動車保険の保険料を抑えたいという方は、1日自動車保険の利用実績に応じて割引を受けられる保険商品もあります。そういった割引を上手に活用して、自分に合った自動車保険に加入するようにして下さい。